小川未明について
1882年生まれの小説家、児童文学作家
代表作:『赤い蝋燭と人魚』『野ばら』
日本のアンデルセンとも呼ばれる
厳しさを増した社会主義弾圧から逃れるために、童話作家に逃げ込んだとも言われている
小川未明自体はロシア文学に親しんでいることから、
社会主義思想に関心があったとも言われている
1946年に創立された日本児童文学者協会の初代会長
1951年に文化功労者に選定
1961年に79歳で亡くなる
『野ばら』について
1922年の作品
この頃は既に作家として一定の成功を収めていたころ
★当時の時代背景★
第一次世界大戦が終わり日本は戦後不況
前年は原敬が暗殺されている
翌年は関東大震災が起こる
作品の要約
大きな国と小さな国の国境で2人の警備兵がいた
大きな国は老人、小さな国は青年であった。
最初はお互いよそよそしかったけど話し相手が誰もいないからすぐに親しくなった
国境には一株の野ばらが咲いていて、その野ばらは二人の心を慰め
蜜を吸いに来るミツバチの羽音は愉快な気持ちにさせてくれた
2人はそのミツバチの羽音で互いに目を覚まし、
話しながら将棋をしたりするなど仲良く時を過ごした
やがて冬が来ると老人が故郷を恋しがるが
代わりに来る人が敵対的な人だったら若者は嫌だったので止める
そうして国同士が戦争状態になると老人は
「私は老いぼれても少佐だから首を持って帰れば出世できる」
と言って青年に自分を殺すようにお願いする
しかし青年は
「どうして私とあなたとが敵どうしか。私の敵は他にいる。」
と言い残し北の戦場へと向かった
国境には老人が取り残され、青年の無事を祈っていたが
ある日旅人から小さな国の兵士が皆殺しになり戦争が終わったことを知る
青年が死んだことを悲しみ石碑に腰をかけていたら眠ってしまった
その夢の中で青年が隊列を率いて老人の前まで来て黙礼すると
野ばらの匂いを嗅いで去っていった
夢から覚めた老人は野ばらが枯れるのを見届けると故郷へ帰っていった
老人と青年の行動について
どちらも互いに敵国の兵士となっても
友情を忘れずにお互いに殺し合いはしなかった
老人は何もせず
青年は戦地に向かった
どう感じるかは読み手次第
・老人を殺さなかったのは情けから
・遠くの戦場の敵であれば殺してもいいのか
・国のために目の前の敵を殺さなくていいのか
・なぜ逃げなかったのか
色々な考察ができる作品だと思います。