現代の常識で考えたら理解不能である考えも、昔は当たり前とされていたことがあります。
今回はそんな考えの一つである「優生学」を取り扱います。
優生学について
昔から野菜や果物、牛や馬などの家畜に対して品種改良がおこなわれていた
原理がわかっていたわけではなく、何となく行っていた
1865年にメンデルによって遺伝の法則が発見される
(エンドウ豆を使った実験が有名)
優性の法則:遺伝子には、表現型が現れ易い遺伝子(優性)と現れにくい遺伝子(劣性)があり、同時に存在した場合、優性の形質のみが表現型として現れる。
【トマトの例】
原種である野生のトマトは小さく、固く、しかも熟しても実が赤くならず不味い、中には毒も含まれているものもあります。
それぞれ形質の異なる品種同士を掛け合わせその子孫から目的の形質をもつものを選抜していくことで、大きく、身が赤い、毒がない、食べるとおいしいトマトができるんです!
ご参考:メンデルの法則
この考え方が飛躍して人間も品種改良できるのでは?と考える人が出てきます。
フランシス・ゴルトン(ダーウィンのいとこ)
「天才」の家系を調べて、「天才」が遺伝する事を示した
さらに考えは飛躍して
チャールズ・ダベンポートが登場する
劣等種と優生種が組み合わさると劣等種となってしまう
→よって劣等種を排除する必要性がある
この考えに影響されたのがヒトラーです。
ヒトラーは人種的純度を求め、ゲルマン民族の優位性を信念として掲げました。
(金髪で青目、背が高い白人がゲルマン人の特徴)
ヒトラーはドイツにおいて強制不妊手術を行えるようにします。
一部では障碍者(特に精神障碍者)を大量安楽死させていたとも言われます。
ユダヤ人迫害も極端な優生思想から生まれたものです。
優生保護法とは
1948年に制定
障害者や特定の疾患を持つ人々に対して
強制的な不妊手術(優生手術)を行うことを合法化
元々は「国民優生法」が1940年に成立していた
優生学の影響が強い国民優生法の大部分がそのまま継承された
第一条
この法律は、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護することを目的とする。
不良な子孫の出生を防止
→当時は親の障害や疾患が子供に遺伝すると考えられていた
1996年に母体保護法に改正されるまで存続した
そんな大昔の話でもないのが驚きです・・・
優生保護法が施行されてから改正されるまでに
強制的に不妊手術された人は約1万6500人
本人の同意を得たケースまで含めると約2万5000人にものぼる
当初国としては「当時は合法であった」として謝罪や補償をしなかった
しかし不妊手術を受けさせられた女性が裁判を起こし、社会問題となる
2024年7月 最高裁が同法を憲法違反として国に賠償を命じた
岸田首相がそれを受けて明確に国の責任であることを認め謝罪
岸田首相の謝罪文抜粋
「旧優生保護法は、憲法違反で、同法を執行してきた立場としてその執行のあり方も含め、政府の責任は極めて重大だ。心から申し訳なく思っており、政府を代表して謝罪を申し上げる」
参考図書紹介
『ブラックジャックによろしく』佐藤秀峰著
巻数で言うと9~13巻で精神障碍者について取り扱ってます。
放送でも話した池田小の事件が題材となっており、いろいろと考えさせられます。